ところで皆さんは、「被曝上限は年間1ミリシーベルト」だと法律で決まっていることを知ってましたか?
俺は知りませんでした。
しかし、これは実際に法律で決まっている。
「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律」というのがあり、この施行規則の中で、一般人(放射線作業従事者以外)の被曝線量限度は、「実効線量が4月1日を始期とする1年間につき1ミリシーベルトとする」と明記されている(第14条4項)。
この「年間1ミリシーベルト」は、ICRP(国際放射線防護委員会)が1990年に出した勧告によるもので、世界各国もこれに従っている。
もちろん、この法律は現在でも生きている。従って、政府(文科省大臣)が今回の事故以後に出した被曝線量限度「年間20ミリシーベルト」は、れっきとした法律違反である。
しかし、メディアはなぜかこの件について触れようとしない。
さらに言えば、一昨日(12月26日)環境省から発表された、「除染重点地域」(福島県、栃木県、群馬県の約半分、茨城県と千葉県の一部)は、年間1ミリシーベルトを超える市町村なので、一般人は住んではいけないのだが、今でも多くの人が普通に生活している。
実は、自分がこのことを知ったのは、図書館で借りてきた『2015年放射能クライシス』(武田邦彦著、小学館)を読んでのこと。武田氏は本書で、年間1ミリシーベルトを超える地域は、福島第一原発より300km圏内の大部分および静岡、愛知県の半分にまで及ぶとしている。自分の住む東京はじめ、首都圏は全域が1ミリシーベルト以上になるわけだ。
その予測はたぶん、的中すると思う。なぜなら、先の「除染重点地域」は空間線量のみしか考慮されていないからで、内部被曝を計算に入れれば、優に武田氏の予測する地域住民は1ミリシーベルト以上被曝していると思えるからだ。
ところでこの「2015年放射能クライシス」には、他にも我々被曝地域に住む(といっても、もはや日本国民のほとんどが今回の事故で被曝しているが)人間たちにとって重要なことが、いろいろ記されている。
武田氏によると、人間(成人)が一日に浴びても自力で回復できる放射能は100ベクレル程度(約1マイクロシーベルト)だという。ところが、現在の食料の基準値は? そう、牛乳1リットルが300ベクレル(来春には新基準値が適用され、50ベクレルへと厳格化)。もちろん一日に1リットル牛乳を飲む人は少ないだろうが、他にも肉や野菜、魚などを食べるわけで、そう考えると、いかに現在の暫定基準値がとんでもない値なのかがわかる。
それから「ホールボディカウンター」は体内のガンマ線しか測れないので、白血病や肺がんの原因とされるベータ線のストロンチウムやアルファ線のプルトニウムといった、もっとも危険な核種は検出できない。(ただしセシウム137は測定できるが、これだけでは放射線被害はほとんどわからないという)
そもそもストロンチウムやプルトニウムは政府は測っていない。これは明らかに意図的に測っていないのであって、測定により今以上に肉や魚が食べられなくなることを恐れているとしか思えない。
また、これはよく考えればもっともなんだが、この10ヶ月、福島や東北、関東に降り注いだ放射性物質は、旅行や出張で移動する人や交通機関に付着して、全国各地に運ばれているという指摘もあった。自分は事故以来、東京近郊より外には出ていないのだが、今更ながら、これもなんらかの対処を政府が呼びかけかけたほうがいいのではないか。
なお、武田氏は除染のことにも触れているが、この件についてはいささか楽観視のきらいがあると思う。前回の日記で触れた「SIGHT」2012WINTER号において、放射線物理専門の山内知也氏は、「線量の高いところはアスファルトをはがすなり家を作り直しなりして、町自体を一から作り直さないと除染できない」と述べている。
武田氏は4年後の2015年、小児の甲状腺ガンが日本国内に多発することで、原発は息の根を止められるとしているが、そこまで待たなければ変わらない国というのは、あまりに希望がなさすぎる。
今回の事故で、妊娠や出産を控えようとする女性はさらに増えたはずだ。それでなくても就職難や低賃金などで高負担を強いられている若者たちは国外に出てしまい、非生産人口である年寄りだけが残るような「終わった国」になるだろう。
おそらく、そうなる前に自分も日本を離れるだろうが、来年は、それがはっきりする年になると思う。「絆」とか「結束」とか、うわべだけの言葉にごまかされてる人は、泣きを見るだろうな。
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